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私の仕事は、葬儀専門の司会です。

先日は、40代で亡くなられた男性の式でした。7年前に職場で心疾患で倒れ、一時は心拍停止して生死の境をさまよい、3年間のリハビリを経て職場復帰したものの、ここ一年は入退院を繰り返して、ついに亡くなられました。

喪主さんである奥さん、ご両親、そして故人さんの幼なじみでもある親友の方にナレーションの為にお話を伺いました。

お母さんからは可愛らしい子供の頃の話、幼なじみの方からは長いつきあいの中でどれほど大切な仲間だったか、そして、若い頃も社会人になってからもスポーツマンで健康だった故人さんが7年前に倒れた時のショック…などを話して下さり、そして奥様からは、家庭での様子を…。

40代前半の故人さんには小学生の子供さんが二人いました。職場で倒れた時は上の男の子は2才で、奥さんは下の子がいる大きなお腹をかかえて病院に駆けつけたそうです。救命措置を受けながらも約1時間止まっていた心臓が再び動き出したのは、奥さんが着いて名前を呼んだ途端だったそうで…。お医者さんも、普通はあり得ない、奇跡的です、きっと奥さんを待ってたんですね、とおっしゃったそうです。

それからの3年間のつらいリハビリを頑張れたのは、それからすぐ生まれた待望の娘の事もずいぶん励みになったと思います、と奥さんはおっしゃり、子煩悩で優しいパパの顔が伺えました。

3年後にようやく職場復帰をしても、以前のように走ったり運動はできないパパ。『子供ながらに、どうしてうちのパパは他のパパのようじゃないの?ときっと思っていたと思うんですけど、その事については二人共ひと言も言いませんでした。子供たちは、今そばにいてくれる、そのままのパパが、大好きでした』と喪主さんはおっしゃり、本当に家族思いで優しく、でも自分のつらい顔や弱音はぜったい見せずに、逆に心配をかけないように周りを気遣う方だったそうです。
きっと、本当に優しい人というのは、心の強い人なんですね。

この年明けには、退院のメドがたち、またもうすぐ家に帰れるね、と話していた矢先の急変で、最後の1週間は家族だけで、子ども達の学校も休ませて、泊まり込みで4人で過ごしたそうです。

元気だった頃の満面の笑顔の遺影写真と、亡くなられている顔は別人のようで、とても細くなられて、お若いだけに痛々しい…。でも、お顔はとても穏やかでした。

式後半。棺の蓋を開けお別れが始まると、子供たちが声をあげて泣き出し、いよいよ閉棺の時間が迫ると、それまできっと我慢されていたのでしょう、ずっと落ち着いた様子でいた奥さんも、最後には棺にすがって膝をついて泣き崩れていました。

最後までずっと、女の子の『パパー‼ パパー‼』という泣き声は響き続け・・・。上のお兄ちゃんは、口をキッと横に結んで下を向いていました。男の子らしく我慢していたのだと思いますが、おばあちゃんに『我慢せんでええんよ』と肩を抱かれると、やはり涙をこぼし、腕でぬぐっている姿に、胸が痛くなりました。

通常は、一般の参列の方にはお花を入れて頂いた後はロビーでお待ち頂いて、最後は親族さんだけで最後のお別れをして頂くのですが、今回は特別にご友人達には式場に残っていただき、最後に友人有志で書かれた寄せ書きの色紙を胸元に置いて頂いて、霊柩車までの柩移動のお手伝いをお願いしました。

ムードメーカーで、賑やかなのが大好きで、いつも仲間と笑っていた故人さん。お見舞いに行くと、家族が驚くほど とびきり嬉しそうな顔になったそうです。
深い悲しみの表情を隠せないご友人達に運ばれて、故人さんは旅立たれました。

まだまだ子供さん達の成長を見守りたかっただろうなぁ、本当に、一日でも長く生きていたかっただろうなぁ、と思うと本当につらく、ナレーションではあやうく涙声になるところでした。

つくづく、こうして元気に生きている事がありがたい、当たり前じゃない、と本当に思います。
命の終わりは自分ではどうする事もできないけど、こうして無念に亡くなって逝く方を思えば、残りの人生は大切に生きなければ…と心から思います。

・・・・・・・・・・・・・・・

思えば式の前。
打ち合わせの後、喪主さんが私にそっと相談にこられました。『子ども達に、火葬の後の主人の姿を見せて良いものでしょうか…』と迷っていらっしゃいました。『上の息子さんには、本人に聞いてみてもよいのでは…』と申し上げたら、『それが聞いてみたら、僕大丈夫や、と言うんですが、やっぱりショックを受けるんじゃないかと思って…。火葬の意味も本人は分かっているし、パパは骨になってしまうんだよ、と言ってるんですが、大丈夫と言います…』
『たしかに、視覚的なショックはあるかもしれませんね。どちらがよいのかは難しいところですよね。・・・子どもさんの様子はお母さんが一番よくわかると思うので、その時の判断でもいいのではないでしょうか。待合室もありますので、どなたかと待たれてもいいかもしれませんね』とお答えしました。

喪主さんもご主人を亡くしたショックと悲しみの中、お母さんでもある場合はこうして子供さんのことも自分の事のように気にされていて、本当に立派だなぁと思いました。
『これからはちゃんと子ども達を私が育てます』とご挨拶もされていた姿が思い出されます。

どうか、この悲しみを乗り越えることができますように・・・

心よりご冥福をお祈りします。合掌。

著者プロフィール Mariko(マリコ)

4年前に38才で葬儀業界に崖っぷち転職したシングルマザー。天職に出逢えた事に喜びを感じつつ、ますます葬儀司会の仕事にハマる。日々マイクを片手に、色んな思いを胸にお別れのお手伝いをしています。

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Marikoおくりびと日記(葬儀専門司会者の思い)
私の仕事は、葬儀専門の司会です。 先日は、40代で亡くなられた男性の式でした。7年前に職場で心疾患で倒れ、一時は心拍停止して生死の境をさまよい、3年間のリハビリを経て職場復帰したものの、ここ一年は入退院を繰り返して、ついに亡くなられました。 喪主さんである奥さん、ご両親、そして故人さんの幼なじみでもある親友の方にナレーションの為にお話を伺いました。 お母さんからは可愛らしい子供の頃の話、幼なじみの方からは長いつきあいの中でどれほど大切な仲間だったか、そして、若い頃も社会人になってからもスポーツマンで健康だった故人さんが7年前に倒れた時のショック...などを話して下さり、そして奥様からは、家庭での様子を...。 40代前半の故人さんには小学生の子供さんが二人いました。職場で倒れた時は上の男の子は2才で、奥さんは下の子がいる大きなお腹をかかえて病院に駆けつけたそうです。救命措置を受けながらも約1時間止まっていた心臓が再び動き出したのは、奥さんが着いて名前を呼んだ途端だったそうで...。お医者さんも、普通はあり得ない、奇跡的です、きっと奥さんを待ってたんですね、とおっしゃったそうです。 それからの3年間のつらいリハビリを頑張れたのは、それからすぐ生まれた待望の娘の事もずいぶん励みになったと思います、と奥さんはおっしゃり、子煩悩で優しいパパの顔が伺えました。 3年後にようやく職場復帰をしても、以前のように走ったり運動はできないパパ。『子供ながらに、どうしてうちのパパは他のパパのようじゃないの?ときっと思っていたと思うんですけど、その事については二人共ひと言も言いませんでした。子供たちは、今そばにいてくれる、そのままのパパが、大好きでした』と喪主さんはおっしゃり、本当に家族思いで優しく、でも自分のつらい顔や弱音はぜったい見せずに、逆に心配をかけないように周りを気遣う方だったそうです。 きっと、本当に優しい人というのは、心の強い人なんですね。 この年明けには、退院のメドがたち、またもうすぐ家に帰れるね、と話していた矢先の急変で、最後の1週間は家族だけで、子ども達の学校も休ませて、泊まり込みで4人で過ごしたそうです。 元気だった頃の満面の笑顔の遺影写真と、亡くなられている顔は別人のようで、とても細くなられて、お若いだけに痛々しい...。でも、お顔はとても穏やかでした。 式後半。棺の蓋を開けお別れが始まると、子供たちが声をあげて泣き出し、いよいよ閉棺の時間が迫ると、それまできっと我慢されていたのでしょう、ずっと落ち着いた様子でいた奥さんも、最後には棺にすがって膝をついて泣き崩れていました。 最後までずっと、女の子の『パパー‼ パパー‼』という泣き声は響き続け・・・。上のお兄ちゃんは、口をキッと横に結んで下を向いていました。男の子らしく我慢していたのだと思いますが、おばあちゃんに『我慢せんでええんよ』と肩を抱かれると、やはり涙をこぼし、腕でぬぐっている姿に、胸が痛くなりました。 通常は、一般の参列の方にはお花を入れて頂いた後はロビーでお待ち頂いて、最後は親族さんだけで最後のお別れをして頂くのですが、今回は特別にご友人達には式場に残っていただき、最後に友人有志で書かれた寄せ書きの色紙を胸元に置いて頂いて、霊柩車までの柩移動のお手伝いをお願いしました。 ムードメーカーで、賑やかなのが大好きで、いつも仲間と笑っていた故人さん。お見舞いに行くと、家族が驚くほど とびきり嬉しそうな顔になったそうです。 深い悲しみの表情を隠せないご友人達に運ばれて、故人さんは旅立たれました。 まだまだ子供さん達の成長を見守りたかっただろうなぁ、本当に、一日でも長く生きていたかっただろうなぁ、と思うと本当につらく、ナレーションではあやうく涙声になるところでした。 つくづく、こうして元気に生きている事がありがたい、当たり前じゃない、と本当に思います。 命の終わりは自分ではどうする事もできないけど、こうして無念に亡くなって逝く方を思えば、残りの人生は大切に生きなければ...と心から思います。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 思えば式の前。 打ち合わせの後、喪主さんが私にそっと相談にこられました。『子ども達に、火葬の後の主人の姿を見せて良いものでしょうか...』と迷っていらっしゃいました。『上の息子さんには、本人に聞いてみてもよいのでは...』と申し上げたら、『それが聞いてみたら、僕大丈夫や、と言うんですが、やっぱりショックを受けるんじゃないかと思って...。火葬の意味も本人は分かっているし、パパは骨になってしまうんだよ、と言ってるんですが、大丈夫と言います...』 『たしかに、視覚的なショックはあるかもしれませんね。どちらがよいのかは難しいところですよね。・・・子どもさんの様子はお母さんが一番よくわかると思うので、その時の判断でもいいのではないでしょうか。待合室もありますので、どなたかと待たれてもいいかもしれませんね』とお答えしました。 喪主さんもご主人を亡くしたショックと悲しみの中、お母さんでもある場合はこうして子供さんのことも自分の事のように気にされていて、本当に立派だなぁと思いました。 『これからはちゃんと子ども達を私が育てます』とご挨拶もされていた姿が思い出されます。 どうか、この悲しみを乗り越えることができますように・・・ 心よりご冥福をお祈りします。合掌。 著者プロフィール Mariko(マリコ) 4年前に38才で葬儀業界に崖っぷち転職したシングルマザー。天職に出逢えた事に喜びを感じつつ、ますます葬儀司会の仕事にハマる。日々マイクを片手に、色んな思いを胸にお別れのお手伝いをしています。