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私の仕事は、葬儀専門の司会です。

先日の式は、40代の男性でした。
私とさほど変わらない年の独身の方。
遺族さんと打ち合わせに入る前にまず棺に手を合わせ、故人さんにご挨拶をするのですが、今日お顔を見ると、顔の半分ほどが布で覆われていて『あれ…?どうして…?』

交通事故でした。

夜中に警察から連絡を受け、駆けつけたご両親。
変わり果てた息子さんの姿にどれほどのショックを受けたでしょうか。

ナレーションのためのご両親との打ち合わせが始まり…
幼かった頃のお話や普段の様子、家族葬にしたけれど、通夜から会社の方が予想以上に訪れて下さり会社での様子を話してくれたこと、離れて独りで暮らしていた息子さんの暮らしぶり…

愛想のない息子だと思っていたけれど、会社ではムードメーカーで、何かとイベントを取り仕切るなど皆さんに慕われ信頼されていたようです、と。
家では見えない、親の知らない一面てありますよね。
時おり涙を流されながら、お父さんお母さん、語って下さいました。

大切に育てた、大事な大事な息子さん。
きっとまだ悪い夢でも見ているかのような激しい動揺の中、お二人ともきちんとした優しい方々で、息子さんのことを思い出させてしまうのが余計につらかったです。

事故から数日間重体のまま、意識は戻ることなく、息を引き取られました。
たとえ数日間でも、あたたかい体に触れられたこと、手を握ってさよならを言えたことが幸いでした、とお母さんが泣かれ、最期に少しだけ時間をくれたことは、息子さんからのご両親への無言の思いだったんじゃないかと思いたい私です。

津波や災害で突然肉親を奪われ、遺体もみつからずに行方不明のままよりは、まだ…
私なら、やっぱり顔を見てお別れをしたい。

式の間、後ろから見ていると、涙を拭っているご両親の背中が小さく震えていて、皆さんの嗚咽と泣き声に溢れた悲しいお別れでした。
時間の許す限り、近くでお別れをしていただきました。

明日さえも知れない人生。
『またね』と別れても、もう二度と会えないかもしれない運命。

つくづく、生きる時間は限られている。
自分の力で生きているんじゃなく
【生かされているんだ】
ということを噛みしめました。

心よりご冥福をお祈りします。合掌。

著者プロフィール Mariko(マリコ)

4年前に38才で葬儀業界に崖っぷち転職したシングルマザー。天職に出逢えた事に喜びを感じつつ、ますます葬儀司会の仕事にハマる。日々マイクを片手に、色んな思いを胸にお別れのお手伝いをしています。

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Marikoおくりびと日記(葬儀専門司会者の思い)
私の仕事は、葬儀専門の司会です。 先日の式は、40代の男性でした。 私とさほど変わらない年の独身の方。 遺族さんと打ち合わせに入る前にまず棺に手を合わせ、故人さんにご挨拶をするのですが、今日お顔を見ると、顔の半分ほどが布で覆われていて『あれ...?どうして...?』 交通事故でした。 夜中に警察から連絡を受け、駆けつけたご両親。 変わり果てた息子さんの姿にどれほどのショックを受けたでしょうか。 ナレーションのためのご両親との打ち合わせが始まり... 幼かった頃のお話や普段の様子、家族葬にしたけれど、通夜から会社の方が予想以上に訪れて下さり会社での様子を話してくれたこと、離れて独りで暮らしていた息子さんの暮らしぶり... 愛想のない息子だと思っていたけれど、会社ではムードメーカーで、何かとイベントを取り仕切るなど皆さんに慕われ信頼されていたようです、と。 家では見えない、親の知らない一面てありますよね。 時おり涙を流されながら、お父さんお母さん、語って下さいました。 大切に育てた、大事な大事な息子さん。 きっとまだ悪い夢でも見ているかのような激しい動揺の中、お二人ともきちんとした優しい方々で、息子さんのことを思い出させてしまうのが余計につらかったです。 事故から数日間重体のまま、意識は戻ることなく、息を引き取られました。 たとえ数日間でも、あたたかい体に触れられたこと、手を握ってさよならを言えたことが幸いでした、とお母さんが泣かれ、最期に少しだけ時間をくれたことは、息子さんからのご両親への無言の思いだったんじゃないかと思いたい私です。 津波や災害で突然肉親を奪われ、遺体もみつからずに行方不明のままよりは、まだ... 私なら、やっぱり顔を見てお別れをしたい。 式の間、後ろから見ていると、涙を拭っているご両親の背中が小さく震えていて、皆さんの嗚咽と泣き声に溢れた悲しいお別れでした。 時間の許す限り、近くでお別れをしていただきました。 明日さえも知れない人生。 『またね』と別れても、もう二度と会えないかもしれない運命。 つくづく、生きる時間は限られている。 自分の力で生きているんじゃなく 【生かされているんだ】 ということを噛みしめました。 心よりご冥福をお祈りします。合掌。 著者プロフィール Mariko(マリコ) 4年前に38才で葬儀業界に崖っぷち転職したシングルマザー。天職に出逢えた事に喜びを感じつつ、ますます葬儀司会の仕事にハマる。日々マイクを片手に、色んな思いを胸にお別れのお手伝いをしています。