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相続税の申告が必要かどうかを判断するためには、故人の遺した財産や債務の金額を把握する必要があります。このとき、家や土地などの不動産については、「金額換算するといくらか?」という評価計算することが必要です。
今回の記事では、相続税の計算のなかでもとりわけ複雑な、土地の評価計算について、基本的な手順を解説します。

土地の評価は、「どの道路に接しているか?」がベースになる

相続税の申告に当たり、土地の評価計算を行うのは難しく、正確に計算するには、税務署や税理士に相談する必要があると考えられます。
しかし、おおまかな概算であれば、実はそれほど複雑ではありません。

以前の記事でも説明しましたが、相続税には「基礎控除額」があり、課税価格(故人の財産から債務を差し引いたもの)が基礎控除額を上回らなければ、相続税の申告も納税も必要ないため、ひとまず、「相続税の申告が必要なのか?」を確認する目的であれば概算でも十分でしょう。
まずは基礎控除額を上回っているかどうかを概算で確認し、いざ相続税の申告が必要となれば、税理士などに相談して細かく算定するのが合理的です。

それでは、ここからは土地評価額の概算を求める方法を説明します。まずは、以下の算式を覚えてください。

土地評価額(概算)=その土地の面積(㎡)×路線価

この算式に出てくる「路線価」とは、道路ごとに国税庁が設定している指標です。
たとえば路線価260の道路に接している宅地であれば、路線価は1,000円単位なので、1㎡あたり260,000円で土地の評価額を求めることができます。

路線価は、毎年7月1日に国税庁がホームページで公表する「路線価図」から確認することができます。
路線価図は地図形式となっているため、相続した土地に接する道路に記載されている路線価を確認してください。

なお、ときおり、道路に路線価が記載されていない場合があります。
そうすると、もし、相続した土地が、路線価のない道路のみに接している場合、評価計算をすることができません。
その場合は、税務署に申請して道路に「特定路線価」という個別の設定をしてもらうことができます(詳細は国税庁ホームページを参照)が、回答には、おおむね1ヶ月の期間がかかることから、早めに申請しておくと良いでしょう。

詳細に土地の評価計算をするなら、「公図」を取得

ここまでは概算で土地の評価額を計算する方法を見てきましたが、実際に相続税の申告が必要となる場合、路線価をベースとして、土地の形状など、主に以下の要素によって評価額を加減しなくてはなりません。

・奥行きの長さ
・間口の狭さ
・奥行きと間口の割合
・複数の道に接している
・不整形(四角ではない)な土地
・がけ地
・広すぎる土地

このように、土地の形状や大きさが評価額に影響するため、土地を購入したときの図面、あるいは、法務局で取得できる「公図」(インターネットでも取得可能)で土地の情報を把握しましょう。
ただし、土地の評価計算のすべてを一般の方が行うのは難しいため、公図など必要な情報を揃えた上で、税理士や税務署に相談した方が無難です。

路線価のない土地は「固定資産税評価額」ベース

路線価図を見たときに、「倍率地域」と記載されている場所があります。この地域の場合、路線価は設定されておらず、以下の算式で土地の評価計算を行うこととなります。

相続税評価額(倍率地域)=固定資産税評価額×倍率

このように、倍率地域の場合、ベースとなる「固定資産税評価額」を、毎年市区町村(東京都の場合は都税事務所)から送付される固定資産税の納税通知書で確認する必要があります。
納税通知書が手元にない場合は、役所にて固定資産税評価証明書を発行してもらい確認することも可能です。

一方、「倍率」は国税庁ホームページで公開されており、路線価と同様に毎年7月1日に更新されます。
たとえば、固定資産税評価額1,000万円で、倍率が1.1であれば、1,000万円×1.1=1,100万円が相続税における評価額です。

なお、倍率地域の場合、土地の形状などはすでに固定資産税評価額に反映されているため、路線価を用いる場合のような詳細な計算は基本的に必要ありません。

路線価も倍率もない地域は個別対応

最後はレアケースですが、路線価図を見たときに、「個別評価」と記載されている地域があります。これは、再開発中の地域など、評価が日々大きく変動しているため、税務署による個別の評価計算が必要となる地域です。

この場合、「個別評価申出書」などを税務署に提出して、評価額を設定してもらう必要があり、上記で説明した特定路線価と同様、回答が出るまでに1ヶ月程度はかかります(詳細は国税庁ホームページを参照)ので、やはり早めの申請が望ましいでしょう。

著者:小林義崇


81年生まれ、福岡県北九州市出身。埼玉県八潮市在住のフリーライター
西南学院大学商学部卒。
2004年に東京国税局の国税専門官として採用。以後、都内の税務署、東京国税局、東京国税不服審判所において、相続税の調査や所得税の確定申告対応、不服審査業務等に従事する。2014年に上阪徹氏による「ブックライター塾」第1期を受講したことを機に、ライターを目指すことに。2017年7月、東京国税局を辞職し、ライターとして開業。
※Twitterアカウントはこちら

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