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自分自身の財産を死後にどのように分配するかを決めるには、遺言書を残すほかありません。
ただし、法律に則った正しい方法でなければ無効となってしまうこともあり得ます。
今回は、遺言の代表的な3つの方式の仕組みとともに、注意点を解説します。

そもそも、「遺言」とは何か?

遺言は、故人の財産の処分方法を、自分自身の意思により決めるための制度で、満15歳に達し意思能力のある方であれば誰でも遺言を残すことができます。

ただし、遺言に関する規定は民法第960条に定められており、法律の求める方式にしたがって行われなければ無効となる可能性もありますので注意が必要です。
遺言の場合、故人の意思を死後に本人に確かめるわけにはいきませんから、手続きに厳密にしたがわなくてはならないのです。

一般的な遺言の方法は3つ

遺言を残すための方法は「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」そして「秘密証書遺言」の3種類が一般的です。この他に、「遭難船臨終遺言」など、限られた場面で使える方法も複数ありますが、今回は代表的な3種類について解説します。

まず、「自筆証書遺言」について。こちらは、遺言をする人自身が、遺産の分け方や、日付、氏名を自書し、これに印鑑を押すものです。
もっとも簡単で、いつでも自分だけで作ることができます。
もし、いったん作成した遺言を変更したいときには、「どこを、どのように変更したか」を記載し、これに署名するとともに、変更箇所に印鑑を押さなくてはなりません。

次に、「公正証書遺言」を説明します。こちらは、全国にある「公証役場」において、2人以上の証人立ち会いのもと、遺言をする人が公証人に口頭で遺言内容を伝えるというもの。
公証人は、遺言者から聞き取った遺言を書き記しますので、遺言者と証人は内容を確認し、遺言者と証人がそれぞれ署名・押印します。

最後の方法が、「秘密証書遺言」です。
こちらは、遺言書の作成までは、自筆証書遺言と同様なのですが、その遺言書を封で閉じ、押印して封印したものを、公証役場に提出するものです。
公証役場では、遺言者は、公証人1人と証人2人以上の前に封書を提出し、それが自分の遺言書である旨などを口頭で申述することで、公証役場で正式な遺言書として保管してもらうことができます。

これら3つの方法のうち、もっとも簡単なものは自筆証書遺言ですが、死後に遺言書が見つからなかったり、その真偽が疑われたりといった可能性がありますから、慎重を期すうえでは、他の2つの方法を利用した方が良いでしょう。

遺言の効力が発生するタイミング

上記のように有効な遺言書が作成された場合、通常は、遺言者が死亡した時に効力が生じます。

「自筆証書遺言」の方式で作成された遺言書を保管している人や、遺言書を発見した相続人は、遺言者の死亡を知ったら、速やかにその遺言書を家庭裁判所に提出し、「検認」という確認を受けなくてはなりません。

また、封印された遺言書については、勝手に開封することは認められていませんので、家庭裁判所において、相続人の立ち会いのもとで開封しなくてはなりません。

なお、家庭裁判所検認を受けたからといって、その遺言書が必ずしも有効と認められたとは限りません。
もし遺言書の真偽や効力に疑いがあれば、裁判において争うことも可能です。

一方、「公正証書遺言」や、「秘密証書遺言」の方式を利用していた場合は、公証役場において公に遺言の記録が残されていることから、検認の手続きをする必要はありません。

以上、今回ご紹介したとおり、遺言を残すには複数の方法があり、どのような方法を採用するのかは、遺産の内容や、相続人間の関係性などを考慮して選択する必要があります。
遺言は、死後にわたって自分の財産を処分するための唯一の手段ですから、慎重に進めていきましょう。

著者:小林義崇


81年生まれ、福岡県北九州市出身。埼玉県八潮市在住のフリーライター
西南学院大学商学部卒。
2004年に東京国税局の国税専門官として採用。以後、都内の税務署、東京国税局、東京国税不服審判所において、相続税の調査や所得税の確定申告対応、不服審査業務等に従事する。2014年に上阪徹氏による「ブックライター塾」第1期を受講したことを機に、ライターを目指すことに。2017年7月、東京国税局を辞職し、ライターとして開業。
※Twitterアカウントはこちら

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小林義崇遺産相続について知りたい
自分自身の財産を死後にどのように分配するかを決めるには、遺言書を残すほかありません。 ただし、法律に則った正しい方法でなければ無効となってしまうこともあり得ます。 今回は、遺言の代表的な3つの方式の仕組みとともに、注意点を解説します。 そもそも、「遺言」とは何か? 遺言は、故人の財産の処分方法を、自分自身の意思により決めるための制度で、満15歳に達し意思能力のある方であれば誰でも遺言を残すことができます。 ただし、遺言に関する規定は民法第960条に定められており、法律の求める方式にしたがって行われなければ無効となる可能性もありますので注意が必要です。 遺言の場合、故人の意思を死後に本人に確かめるわけにはいきませんから、手続きに厳密にしたがわなくてはならないのです。 一般的な遺言の方法は3つ 遺言を残すための方法は「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」そして「秘密証書遺言」の3種類が一般的です。この他に、「遭難船臨終遺言」など、限られた場面で使える方法も複数ありますが、今回は代表的な3種類について解説します。 まず、「自筆証書遺言」について。こちらは、遺言をする人自身が、遺産の分け方や、日付、氏名を自書し、これに印鑑を押すものです。 もっとも簡単で、いつでも自分だけで作ることができます。 もし、いったん作成した遺言を変更したいときには、「どこを、どのように変更したか」を記載し、これに署名するとともに、変更箇所に印鑑を押さなくてはなりません。 次に、「公正証書遺言」を説明します。こちらは、全国にある「公証役場」において、2人以上の証人立ち会いのもと、遺言をする人が公証人に口頭で遺言内容を伝えるというもの。 公証人は、遺言者から聞き取った遺言を書き記しますので、遺言者と証人は内容を確認し、遺言者と証人がそれぞれ署名・押印します。 最後の方法が、「秘密証書遺言」です。 こちらは、遺言書の作成までは、自筆証書遺言と同様なのですが、その遺言書を封で閉じ、押印して封印したものを、公証役場に提出するものです。 公証役場では、遺言者は、公証人1人と証人2人以上の前に封書を提出し、それが自分の遺言書である旨などを口頭で申述することで、公証役場で正式な遺言書として保管してもらうことができます。 これら3つの方法のうち、もっとも簡単なものは自筆証書遺言ですが、死後に遺言書が見つからなかったり、その真偽が疑われたりといった可能性がありますから、慎重を期すうえでは、他の2つの方法を利用した方が良いでしょう。 遺言の効力が発生するタイミング 上記のように有効な遺言書が作成された場合、通常は、遺言者が死亡した時に効力が生じます。 「自筆証書遺言」の方式で作成された遺言書を保管している人や、遺言書を発見した相続人は、遺言者の死亡を知ったら、速やかにその遺言書を家庭裁判所に提出し、「検認」という確認を受けなくてはなりません。 また、封印された遺言書については、勝手に開封することは認められていませんので、家庭裁判所において、相続人の立ち会いのもとで開封しなくてはなりません。 なお、家庭裁判所検認を受けたからといって、その遺言書が必ずしも有効と認められたとは限りません。 もし遺言書の真偽や効力に疑いがあれば、裁判において争うことも可能です。 一方、「公正証書遺言」や、「秘密証書遺言」の方式を利用していた場合は、公証役場において公に遺言の記録が残されていることから、検認の手続きをする必要はありません。 以上、今回ご紹介したとおり、遺言を残すには複数の方法があり、どのような方法を採用するのかは、遺産の内容や、相続人間の関係性などを考慮して選択する必要があります。 遺言は、死後にわたって自分の財産を処分するための唯一の手段ですから、慎重に進めていきましょう。 著者:小林義崇 81年生まれ、福岡県北九州市出身。埼玉県八潮市在住のフリーライター 西南学院大学商学部卒。 2004年に東京国税局の国税専門官として採用。以後、都内の税務署、東京国税局、東京国税不服審判所において、相続税の調査や所得税の確定申告対応、不服審査業務等に従事する。2014年に上阪徹氏による「ブックライター塾」第1期を受講したことを機に、ライターを目指すことに。2017年7月、東京国税局を辞職し、ライターとして開業。 ※Twitterアカウントはこちら