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使っていない実家の不動産は生前に売却すべきか? 相続後に売却すべきか?

遺産相続について知る

私が執筆しました

小林義崇

1981年、福岡県生まれ。2004年に東京国税局の国税専門官として採用され、相続税の調査や所得税の確定申告対応、不服審査業務等に従事。17年7月、フリーライターに転身。書籍や雑誌、ウェブメディアを中心とする精力的な執筆活動に加え、自身のYouTubeチャンネルでお金に関する発信を行っている。
【著書】
すみません、金利ってなんですか?
「元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者」

使っていない不動産を所有していませんか? そうした不動産を売却すると現金収入を得ることができますが、「生前に売るか、相続後に売るか」によって、税金に影響が出ます。今回は、売却のタイミングによる税金への影響を解説したいと思います。

生前に不動産を売却した場合の税金

不動産を売却すると、所得税や住民税を課税される可能性があります。ここで課税されるかどうかを知るために、「譲渡所得」の計算をまず紹介しましょう。

「譲渡所得」は、(譲渡収入−取得費−譲渡費用)という算式で求められ、この算式を求めた結果プラスになると、所得税や住民税が課せられます。

「譲渡収入」は、「土地建物等を売却した売値」です。そして「取得費」は購入時にかかった費用、「譲渡費用」は仲介手数料など売却時の費用を指します。

この取得費については、土地は購入費をそのまま使えますが、建物は古くなるほどに取得費に入れられる金額が少なくなっていきます。たとえば木造家屋の場合、築30年程度で、取得費はほとんどゼロになる計算です。

また、土地については物価の変動は考慮されず、100年前に100万円で購入したものも、3年前に100万円で購入したものも、取得費は同額となります。

ですから、購入してそれほど年数を経ずに売った場合は譲渡所得が少なくなります。

一方、先祖代々引き継いだよう古い不動産の場合、通常は譲渡所得が高額となるため、所得税・住民税の負担も重くなってしまいます。

しかも、居住用や事業用の不動産であれば特例による軽減措置もありますが、使われていない不動産の場合、通常はそうした措置がなく、譲渡所得に対して以下の税率が課されます。

長期譲渡所得:所得税15%・住民税5%・復興特別所得税2.1%
短期譲渡所得:所得税30%・住民税9%・復興特別所得税2.1%

この「長期」と「短期」の区分は、売却した年の1月1日時点において所有期間が5年を超えていれば「長期」、5年以下であれば「短期」と判定されます。

つまり、長期所有の不動産を売却し、2千万円の譲渡所得が発生した場合、4,042,000円の税負担が生じるということです。さらに国民健康保険に加入している場合は、こちらの保険料にも影響します。

次は、相続税のことを考えてみましょう。

相続税は、死亡日時点の財産に応じて課せられるものですから、生前に不動産を売却して現金収入を得ると、その現金の残高が相続税の対象に加算されます。
相続税の計算方法については下記の記事をご覧ください。
相続税の申告 相続税の申告は不要?計算手順や手続きを解説します

つまり、生前に不動産を売却するということは、相続財産を「不動産」から「現金」に変える行為でもあるということです。

このことによる影響は次から解説します。

不動産は相続まで持っておいた方が節税効果あり

それでは、ここからは亡くなるまで不動産を持っておいて、相続後に売却するパターンを考えてみましょう。この場合、不動産を所有した状態で亡くなったわけですから、その不動産が相続税の対象となります。

相続税の計算をするためには、不動産を評価計算する必要がありますので、評価方法については、以下の記事をご参照ください。

不動産の評価 土地編 相続税における、不動産の評価方法【土地編】 相続税における、不動産の評価方法【建物編】 相続税における、不動産の評価方法【建物編】

このようにして求める不動産の評価額ですが、一般的には「時価の7割程度」になるように設定されています。そのため、たとえば3千万円の時価の不動産であっても、相続税の計算においては2千万円程度のものとして扱われます。

したがって、相続税を節税するという意味では、現金を持っておくよりも、不動産で持っておく方が有利ということです。

たとえば、極端なケースですが、3千万円の価値のある不動産を、亡くなる1日前に売却するのと、亡くなった日に売却するのでは、それだけで相続税の金額が変わってくるのです。

相続後に売るなら、死亡後3年10ヶ月以内に

相続した不動産を、その後売却する場合、基本的には生前に売却した場合と同じく、譲渡所得が生じ所得税や住民税が発生します。

このとき、すでに相続により所有権は相続人に移っているわけですが、取得費や所有期間の計算は、最初に購入したときのものを引継ぎます。

たとえば、父親が昭和30年に500万円で購入した土地を、息子が相続して売却した場合、取得費は500万円、所有期間は昭和30年から売却時まで所有していたとして判断されるということです。

さらに、「相続財産を売却した場合」にだけ使える特例もあります。それが租税特別措置法39条に規定する「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」(以下「取得費特例」)です。取得費特例は、その名のとおり相続財産を譲渡(売却)した場合に使えるもので、所得税や住民税を抑える効果があります。

この特例を受けるための条件は以下の3つです。

  1. 相続により財産を取得した
  2. その財産を取得した人に相続税が課されている
  3. その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却していること
つまり、相続税がかかった人であれば、相続財産を上記3の期間に売却することで、特例を受けることができます。

それでは、特例の効果について説明しましょう。算式などの詳細は、国税庁ホームページを確認していただければと思いますが、簡単に説明すると、「その人に課せられた相続税の内、売却した不動産に対応する金額」を、譲渡所得から差し引けるというものです。

以上、本記事で見てきたとおり、使わない不動産がある場合、「不動産のまま相続して、3年10ヶ月以内に売却する」のが節税的には効果的です。

ただし、不動産の時価は変動するものであり、高く売れるタイミングというものがあります。また、不動産を所有している間は固定資産税の負担もありますので、売り時を考慮しながら、節税効果と合わせて売却時期を検討されるとよいでしょう。

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