仏さまとひとつになれる骨仏(こつぼとけ)。新しいお墓のカタチ

骨仏イメージ
人はいずれ死ぬ日がやってきます。
若いときは死について具体的に考えることは少ないですが、40代に突入すると親が高齢になり、自分や配偶者にも老いが近づいてきたことを実感するようになります。
そして、「あれ?そう言えば親が入るお墓ってあったかなぁ」など具体的に考え始めます。

最近では残された方の負担を考え、「お墓はいらない」と考える人も増えています。
「お墓はいらない」と言っても、骨を捨てることは法律に反してしまいます。

現在では、そうしたニーズに応えるべく、海に散骨したり、樹木葬にしたりと様々な新しい形のお墓が生まれています。

今回はその中でも「骨仏」にスポットを当ててみたいと思います。

骨仏に興味を持つ人、最近増えてます

特にご高齢の方々のあいだで密かなブームとでもいいましょうか、骨仏とは何かを説明できる方が年々増えてきてるように見受けます。

とは言え、「骨仏なんて初めて聞いたよ」という方も多くおられることでしょう。

骨仏について、簡単にご説明します。

骨仏とは?

骨仏とは、なんだと思いますか?

骨仏? ほねぼとけ? う〜ん、もしかして骨でつくった仏様のこと? いや、それとも仏様の骨のことでしょうか?

漢字から、そんなイメージが浮かんだ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
それほど的外れな答えではありません。

骨仏は、「こつぼとけ」、または「こつぶつ」と読みます。
「ほねぼとけ」もあながち間違いではありません。
読み方は人それぞれですので、言いやすいように読んでくださいということのようです。

で、骨仏とはなになのか?
一言でいえば、遺骨を納める仏像のことです。
近代の少子高齢化に伴い、無縁仏が増える社会の中でいかに安心して、しかも、費用負担軽く末代まで祀ってもらえるかということをもとに注目を集めている”お墓の新しいカタチ”とでもいえるでしょうか。

※無縁仏とは
供養する親族や縁者のいなくなった死者またはその霊魂、またはそれらを祭った仏像や石仏などを意味する。(Wikipedia参照)

骨仏は大きく2種類に分けられます。
それが一体型骨仏胎内型骨仏です。
以下、順に説明します。

骨仏の種類1:人骨を固めてつくる一体型骨仏

一体型骨仏は死後お寺に納められた遺骨の一定期間分をひとまとめに集めてつくる仏像になります。

大阪にある一心寺では10年分をまとめてつくります。
なぜ10年分かというとそれだけの遺骨がないとつくれないということも理由のひとつとしてあるようです。
一体型骨仏は骨仏師という専門家によってひとつひとつ丁寧にすり潰され砕かれたのち、ふるいにかけられ粉末状になった遺骨をセメントやセラミック等に混ぜ合わせ固めてつくられます。
これは決して骨が足りなくてカサ増ししている訳ではなく、骨だけでは結合できないので混ぜ合わせているようです。

骨仏の種類2:仏像内に安置される胎内型骨仏

胎内型骨仏は、仏像の中の空洞に遺骨を納める方式です。
先ほどの一体型方式と比べ10年待たずに安置してもらえる上、お寺によっては期間内であればご返骨も可能です。
なぜなら、仏像の胎内(なか)に納められるだけで済むからです。

胎内型骨仏のイメージの一例↓

(※本寿院、東京)

お墓を骨仏にするメリット・デメリット

骨仏にするメリット

費用が圧倒的に安い

一般のお墓は墓石代、工事費、永代使用料などをまとめると、全国平均で174.1万円かかると言われてます(※第9回お墓の消費者全国実態調査2017より)。
それがお寺にもよりますが、お骨仏の場合、1霊あたり3万円のみ。しかも、年会費、管理費不要で永代使用料も全て込み込みでこのお値段というのですから驚きです。

管理の手間がかからない

「お墓の管理ってめんどくさい?」そんなことを言うとバチが当たってしまいそうですが、人間ですからそう感じてしまうこともありますよね。
それが骨仏の場合、すべてお墓(骨仏)の管理はお寺関係者の方が面倒をみてくれます。お花の取り替えもお供えものの交換も全部やってもらうことができます。
手間がかからない上に、いざ会いたくなったら気軽に会いにいけるのも骨仏のよいところです。

多くの方に拝んでもらえる

ご遺体のどこか一片で構いません。骨仏にほんのわずかでも分骨されたなら祈りの対象として扱ってもらえます。
そして骨仏になったら、親族だけでなく、他の骨仏になられた方のご家族、友人、親戚の方から一般参列者までありとあらゆる方から拝んでもらえます。亡くなったあとに無縁仏にならず多くの方に拝んでもらえるのはとても幸せなことだと思います。

仏と一体になる喜び

仏様と一体になれることは、多くの人が心のどこかで望んでることではないでしょうか。
骨仏は生前予約ができます。いつか仏様と一体になれる、あるいは仏様の胎内で守られると感じられたら、安心感を得られるのではないでしょうか。

骨仏の4つのメリットを紹介しましたが、もちろんデメリットもあります。

骨仏にするデメリット

個人の占有物にすることができない

それはそうです。骨仏は、複数人の遺骨でひとつの仏様に、あるいは複数人の遺骨が仏様の中に納められるものです。
そのため、「この骨仏は私の所有物だ!」と主張することができません。ですので、初めから所有の先祖代々のお墓を引き継いでそこに入りたいという場合や、一人でひとつのお墓に入りたいと望む場合は骨仏には向きません。
ただし、価格が高額になることを問題視しないのであれば一体の仏像にひとりではいる一身仏オプションも存在します。墓石の代わりに仏像をお墓がわりにしたいと望むなら、まずはお寺に相談の上検討するのも一つの手です。(もちろんその場合は3万円では済まず、管理費なども必要となることをお忘れなく)

遺骨が戻ってこない

多くの骨仏は一度納めると遺骨は戻ってきません。
また戻ってくる場合も一定期間が過ぎると戻ってきません。
もし、それが心残りだということであれば、一部の遺骨を手元に残しておき、手元供養を行うことをおすすめします。

納めた遺骨が本当に骨仏になっているのかわからない

「骨仏にされずこっそり廃棄されてしまってるのでは?」
目の前で骨仏におさめられるのを見られない場合、そんな気持ちが少し出てしまうかもしれません。
今はネットの時代。不正をすればすぐに噂が広がる時代です。検索して多くの不安な情報がない場合は性善説で信用してもよいのではないでしょうか。
または、お骨を納めるお寺にどのように管理されてるのかを尋ねるのが一番だと思います。詳細に答えられないようであれば、管理が徹底できてない可能性がありますので、他を当たった方がよいでしょう。

知ってると自慢できるかも!骨仏の歴史

日本国内における骨仏ヒストリー

お骨佛(遺骨でつくられた阿弥陀如来像)で有名な一心寺の場合、最初につくられた骨仏は、1851年(嘉永4年)以来に納骨されたおよそ5万体の白骨を粉末状に砕き、布海苔を結合材としてつくられた阿弥陀如来像です。それ以来、計13体の骨仏が建造されましたが、うち6体が戦火で残念ながら消失してしまい、現存するのは7体となってます。一心寺で骨仏のしきたりが始まったのが明治20年、そこから130年以上の歴史をもち、現在およそ200万人もの故人が阿弥陀仏の姿となって安座されてます。
これからの超高齢化社会においてはますます多くの方が骨仏となり世界を明るく照らし続けることでしょう。
※滋賀県大津市にある三井寺はなんと九世紀につくられたとのことで国宝に指定されてます。

>>一心寺の公式HP

海外における骨仏ヒストリー

骨仏とは違いますが、海外においても人骨をあえて人前に晒すことで畏敬の念を感じさせる文化があります。その代表的なものがしてチェコの「セドレツ納骨堂」です。

>>セドレツ納骨堂の公式HP

こちらは1870年にもともとあった教会に人骨を装飾して飾られたものですが、骨仏にせよセドレツ納骨堂にせよ、こうした形で人の骨を後世に見せてくれるのは、本来お骨に感じる怖さを通り越して、畏敬の念を感じさせられますね。

骨仏はこんな人にオススメ

  • 無縁仏(死後お墓を管理してくれる人がいない、いなくなる可能性がある)に当たる方
  • 先祖代々のお墓、配偶者と同じお墓に入りたくない方
  • 子供や身内に面倒かけたくない方
  • 仏の胎内で安らかに眠ることに願望を抱く方

こうした思いがある方には骨仏がお勧めです。

骨仏になるのに必要な費用、手続き、流れなど

ここで紹介する内容はお寺によって変わりますが、大まかなところを抑えておけば役に立ちますので参考にしてください。

骨仏に入れるための条件

仏像なので仏教でなければいけないと思われがちですが、キリスト教、イスラム教などといった宗派は問われません(ただし一部 例外の宗教もあり)。基本的には誰もが入ることができます。

骨仏になるためにかかる費用

お寺によって変わりますが、一般に一霊3〜5万円程度が目安となります。この価格で管理費や年会費、永代供養費すべて込みとしてるところが多い傾向です。
※一部永代供養費別途のところもあり。

骨仏のための手続き

納骨は完全予約制で受け付けているお寺もあれば、予約なしで当日受け付けてくれるお寺もあります。事前にホームページ等で確認し、完全予約制のお寺の場合には電話、メールにして相談してみましょう。
なお、卒塔婆(塔婆)に書き込んでもらうために下記の内容事前に伝えられるように準備しておけたらいいですね

  • 施主(責任者)の名
  • 戒名(なければ生前の名)
  • 故人の死亡年月日

※卒塔婆とは
卒塔婆とは、供養のために用いる細長い板のことです。卒塔婆は、故人や先祖を供養する追善供養の目的で立てられます。(ここからはじまるえんぱーく参照)

納骨当日に必要となる持ち物

納骨のときに忘れ物がないよう、あらかじめ準備しておきましょう。
とくに絶対に忘れてならないのは、当然おことながら遺骨です。関西と関東で大きさが違いますがいずれの場合も、風呂敷で外箱ともに包み胸に抱いて持参します。

その他、下記のものも忘れずに持っていってください。

  • 身分証明証
  • 火葬許可証(証明書)
  • 数珠
  • 納骨費用

納骨当日の流れ

  1. 法要に参列します
  2. 回向座の受付に骨を渡して焼香

読経と休憩時間含め1時間ほどみておくといいでしょう。
一体型の場合、納骨された遺骨の一部は粉末にして所定の木箱に納められたのち、次期お骨佛まで納骨佛の下方に奉安されます。

いつお骨佛があるのか

一体型の場合一定期間に一度となります。
大阪の一心寺の場合、納骨した翌年の4月26、27日に「年次納骨供養大法要」が催されます。
そして次の10年にあたるのが 平成39(2027年)初夏です。その段階で開眼し、めでたく骨仏となります。

なぜ今、骨仏が注目されてるのか

骨仏がなぜこれほどまでに注目を集めるようになったのでしょう。
それはテレビやメディアの影響はもちろんありますが、次のような時代背景があるからです。

骨仏が注目を浴び始めた理由、時代背景

  • 老齢化:管理できずお墓を手放す人が増えた
  • 個人主義化:面倒みてくれる子供がいない人が増えた
  • 少子化、離婚、跡継ぎがいない:無縁仏の増加(いずれ無縁になる)
  • 不景気:一般的なお墓より安い

また、遺骨は放置すると刑法190条、遺骨遺棄罪にあたること、散骨をした場合にもその後に手を合わせる場所がなくてせつないなど様々な事情が考えられます。

全国の骨仏情報まとめてみました

あなたのお住まいの近くにはありますか?
骨仏を将来的に考えている方はまず問い合わせをしてみるとよいでしょう。

項目 内容
名称 広徳寺
所在地 埼玉県本庄市児玉町児玉1504-3
電話番号 0495-73-4109
納骨形式 胎内型
納骨費用 3万円
項目 内容
名称 本寿院
所在地 東京都大田区南馬込1-16-2
電話番号 03-3772-8889
納骨形式 胎内型
納骨費用 3万円
項目 内容
名称 浄光寺
所在地 神奈川県横浜市旭区白根8-1-18
電話番号 045-953-3650
納骨形式 胎内型
納骨費用 3万円
項目 内容
名称 円宗院
所在地 神奈川県平塚市東中原2-17-7
電話番号 0463-33-9004
納骨形式 胎内型
納骨費用 3万円
項目 内容
名称 国上寺
所在地 新潟県燕市国上1407
電話番号 0256-97-3758
納骨形式 一体型
納骨費用 5万円(永代供養をご希望の方は別途相談)
項目 内容
名称 孝真寺
所在地 石川県金沢市十一屋町16-8
電話番号 076-241-0887
納骨形式 胎内型
納骨費用 非公開、要相談
項目 内容
名称 一乗院
所在地 愛知県名古屋市天白区中平2丁目1914
電話番号 052-805-7400
納骨形式 不明
納骨費用 不明
項目 内容
名称 金戒光明寺
所在地 京都府京都市左京区黒谷町121
電話番号 075-771-2204
納骨形式 胎内型
納骨費用 分骨:8万円 総骨 :10万円 ※浄土宗 の信仰が必須
項目 内容
名称 西願寺
所在地 滋賀県近江八幡市船木町1246
電話番号 0748-33-4073
納骨形式 一体型
納骨費用 5万円(永代供養希望の場合は別途相談)
項目 内容
名称 一心寺
所在地 大阪市天王寺区逢阪2丁目8-69
電話番号 06-6771-0444
納骨形式 一体型:10年に1 度建造
納骨費用 小(小骨・分骨用 )1万円又は、1.5 万円又は、2万円
大(胴骨・全骨) 1.5万円又は、2万 円又は、3万円
項目 内容
名称 東林寺
所在地 島根県松江市外中原町358
電話番号 0852-21-3915
納骨形式 胎内型
納骨費用 75万円
項目 内容
名称 法然寺
所在地 香川県高松市仏生山町甲3215
電話番号 087-889-0406
納骨形式 記載なし
納骨費用 10万円〜
項目 内容
名称 長専寺
所在地 福岡県遠賀郡水巻町立屋敷3-13-13
電話番号 093-201-3642
納骨形式 納骨型
納骨費用 大:3万円 小:1 万円
※長専寺の檀信徒でない場合は護持費1年分5,000円が必要です

※上記情報は公式ホームページあるいは市町村など関係サイトの情報に基づきます。(2018年10月現在)

まとめ

さて、いかがでしたでしょうか。骨仏の概要はおおむね把握できたのではないでしょうか。
現代の社会事情により、今後お墓を持たない人が増えてくることは間違いなく、そうした方々にとって骨仏は選択肢のひとつに入るものだと思います。
現在は一般的なお墓以外に、海洋散骨、樹木葬、そして最近では宇宙に散骨する宇宙葬なんてものもあります。

あなたにとって、家族にとってどういう形のお墓が望ましいのか。
一度、時間を取って家族で話しあってみるものいいかもしれませんね。