数が増える納骨堂~区画墓地から納骨堂へ

納骨堂

1.なぜ納骨堂が増えるのでしょう?

多くの日本人は、亡くなった親族を代々先祖が眠る墓に骨にして納めて、定期的にその墓にお参りに行く、という習慣を続けてきました。
しかし、高度成長期以降に、地方から都市へと移り住む人が増え、そのまま都市に住み続け、子どもを産み育てていき、次第に出身地である地方が疎遠になる人が増えました。
その結果、遠くの出身地に残る墓を守れない、人と人の付き合いが希薄な都市生活に慣れたために古来の家制度や檀家のなごりなどのしがらみが煩わしいので断ち切りたい、などの理由から、自分たちが住んでいる都市部などの墓参しやすい場所に、墓を移す動きが盛んになりつつあります。
ただ、都市部の民営の区画墓地は高額であることや、公営の区画墓地は競争率が高いか空きがないという課題があります。
そんな中で現在、東京を中心とする都市部では、自動搬送式の納骨堂が、従来からの納骨先である区画墓地に代わって増えています。
納骨堂は、その運営者にとっては高層化が可能であることから土地を多く使わずに建設できるので、都市部の交通至便な場所にも建てられること、弔う方にとっては季節や天候に関係なく墓参できるという利点があります。

2. 納骨堂の種類

2.1 自動搬送式

この形式は現在、東京を中心とした都市部で広がっている納骨堂の形式です。
仕組みとしては立体駐車場を小さくしたようなもので、立体駐車場の車を置く部分に個々の骨壺が保管されていると考えてもらえばいいでしょう。
仏壇は共用であり、参拝や供養の際に骨壺が自動的に仏壇に運ばれてきます。
この方式は、土地の確保が難しい都市部にあっては、同じ地域で区画墓地を造成するよりも容易に建設できる利点があります。
これらの理由から、この形式の納骨堂は、新たに遺骨の納骨先を探す場合区画墓地に比べて確保しやすいと言えます。

2.2 仏壇型(ロッカー型、小型仏壇)

親族間の事情で納骨先を確定することができない場合や、弔う方が負担可能な費用の問題などから、区画墓地よりも安価に遺骨を納められる納骨堂が自動搬送式が現れる以前からあります。
この形式は、駅にあるコインロッカーのような形をとっており、個々にロッカー状のスペースに取り付けられている両開きの扉を開けると、小型の仏壇がありその奥に骨壺が納められています。
最近では、新たに納骨先を確保したいという方の中に、自動搬送式から得られる悪印象(軽々しい、墓としてふさわしくないという思いなど)と外のお墓を作りたいが容易ではないという事情から、妥協点として敢えてこの形式を選択する方がいます。

2.3 仏壇型(特別壇、大型仏壇)

これは、先に記した自動搬送式やロッカー型とは異なり、固定された立派な仏壇が立ち並ぶ納骨堂です。
先に挙げた2つの形式の納骨堂は、いずれも区画墓地よりも場所をとらず安価なものですが、この仏壇型は、納骨堂の中にある室内に高価で立派な大型仏壇を購入して、そこに遺骨を納めるというものです。
したがって、その価格は区画墓地をしのぐものもあり一例としては1つの仏壇が600万円近くにもなります。
この特別壇には、ガラスの扉を開閉できる仕組みになっているものもあります。
このような形式であれば、区画墓地や上記の2つの納骨堂に比べ開放的で、故人にとってもいい環境だと考える方もいます。

2.4 参拝時にその場に骨壺が有ることにこだわらない納骨堂

参拝時にその場に骨壺が有ることにこだわらない納骨堂もあります。
この方式をとっている、東京都内の寺院の納骨堂は次のとおりです。
一般の自動搬送式の納骨堂に比べて広い参拝室があり、参拝者はそこで参拝します。参拝室には、仏像がありその手前には花代と焼香台があります。
また、参拝室の横の壁には大型のモニターが備え付けられています。
参拝の段取りは、仏像に向かって花を捧げて、焼香し手を合わせ、大型のモニターから映し出される故人との思い出(映像など)が流されるのを見聞きすることで、故人からのメッセージを受け取るというものです。
なお、骨壺は参拝室の向こう側にあり、希望者には担当者が参拝に先立ってその場所から骨壺を出します。
このような方式を採用した寺院の考えには、自動搬送式を採用することに対する経営的な疑問(設備費が高価)や、そもそもなぜ参拝のたびに遺骨を運び出す必要があるのかという疑問があったと言います。
したがって、価格も先に挙げたものに比べて安価であり、一例として1人50万円程度ですむものがあります。

3.納骨堂のメリット・デメリット

3.1 メリット
特に、新たな土地の確保が簡単ではない都市部では、納骨場所を新たに確保する場合、納骨堂の方が区画墓地よりも確保しやすいです。また、一般には価格も民間の区画墓地と比較すると安いです。
また、納骨堂によっては、永代供養の選択をすることも可能です。
ただし最終的に一定期間を経過すると合葬墓に移される場合も多いので、それを了解することが必要です。
なお、先に記した特別壇の納骨堂については極めて高い値段であり、提供するサービスも他の納骨堂とは大きく異なります。

3.2 デメリット

納骨堂には民営のものもありますが、納骨堂の運営者が将来的に万一経営破綻した場合、遺骨の扱いが不透明となります。
したがって、将来的にも遺骨を安置できるかどうかを可能な限り見極める必要があります。
また特別壇の納骨堂以外は、光の当たらないところで遺骨が保管されることが一般的であり、供養や参拝される時にならないと陽の目を見ません。
特に、自動搬送式はその構造から、明らかに閉暗所で骨壺が保管されています。
ロッカー型でも墓参者が来なければ照明を点灯せず、普段は陽が当たらないところもあります。このことに心を痛める方もいます。
なお、この点は区画墓地のカロート(遺骨を納めるスペース)に保管されている場合と変わりません。
ただ区画墓地の場合、少なくとも墓石は地上に常に出ており、これまで一般的だった埋葬方法だったので、弔う方には違和感がない方が多いでしょう。(実際には、長期間カロートに骨壺を保管すると、湿気で骨壺に水が多くたまっていることもしばしばあります。墓を移すためにカロートを開けた時に、それを目の当たりにして心を痛める方もいます。)

4.納骨堂の活用と手元供養などを組合わせ納得いく供養をする道も

納骨堂一つをとってみても、その形式は多様であり、弔う方の受け止め方も各々で異なります。
いずれの納骨堂にも、場所の確保の難易度、価格の高低、提供されるサービスなどの要素で、長所と短所があります。
これらを受け止めて、亡くなった方と向き合いもっとも望ましい納骨の方法を、弔う方自身が判断しなくてはなりません。
いずれの納骨堂による供養にも納得できない場合には、一部の骨を分け手元で供養したり散骨したりするという方法もあります。
遺骨は一か所に納めるというこれまでの一般的な考え方にこだわらず、遺骨の一部を分けて別の供養と組み合わせることで、弔う方が納得できる道も一考に値するでしょう。