手元供養における分骨について

分骨することは問題ないのでしょうか

手元供養をする際は分骨することが一般的ですが、分骨することに問題はないのでしょうか。

生前に一体だった体の一部が、遺骨となってから分けられることについては、生きている時の状態と異なることから、抵抗感を持つ方も多いでしょう。
それは、脳死後の臓器移植を了解することに対する抵抗感に近いのではないかとも思います。

この抵抗感について、宗教的な観点日本の生活史から考えてみましょう。

まず、仏教の世界では、その開祖である、お釈迦様の遺骨は細かく砕かれて、様々な場所で仏舎利塔が建立され納められています。このことが幅広い地域の人々の信仰を支える一つの役割となっています。

日本では、東日本、西日本のいずれの民族でも古代は一か所に埋葬し弔うのが一般的でした。その後、平安時代になって、平安京などの当時の都市部を中心に、遺体は街はずれなどに埋葬する一方、供養する場所は人が住む参拝しやすい場所とする形が貴族を中心に広がっていきました。
都市部に人が集まることに伴い、亡くなる方も増え、市街地での遺体の埋葬が生活する上での支障となってきたことが理由の一つです。火葬が広がり始めたのもこのころと言われます。

この流れに繋がるように、和歌山県高野山の寺院などでは、一部の遺骨を寺院本院に納め、残りの骨を自身の先祖代々の墓に納めるなどの供養方法が行われ始め、近畿地方から西日本を中心にその風習が、寺院によって一般大衆に拡げられていきました。

このような経過もあって、骨上げの際の風習には大まかな地域差があります。
東日本では骨上げの際に、全ての遺骨を持ち帰る「全部収骨」が一般的です。
西日本では骨上げの際に、喉仏と歯骨、胴骨と歯骨など、地域によっては異なるものの遺骨の一部を「部分収骨」をするが一般的です。

このように追ってみると、少なくとも仏教における葬送方法と日本の生活史の双方から見ても、遺骨を一か所に埋葬し供養することは必須ではなく、分骨を積極的に否定する理由は見当たらないと言えます。

以上から様々な選択があり得ると言えるので、最終的には、喪主を初めとした弔う方が、故人の残した言葉や人生に思いを馳せて、納得できるように判断することが大事です。その選択肢として、分骨して身近で手元供養し続けるという方法を選んでも問題はありません。

2.分骨のタイミング

それでは、手元供養をすることにし、分骨の管理を別の方に依頼しない場合、分骨をするタイミングはいつがいいでしょうか。

このタイミングで望ましいのは、亡くなってから墓や納骨堂への埋葬をするまでの間に、手元供養する骨を分けることです。なぜなら、この間であれば、物理的に分骨の作業を行えばよく、基本的には新たな事務手続きは不要だからです。

なお、一度墓などに埋葬した後に分骨する場合には、現在の埋葬先から分骨証明書を発行してもらうなどの事務手続きが必要となるケースがあります。(将来的に手元供養していた遺骨をお墓におさめる場合に必要になります)

>>参考) お墓に埋葬していたお骨を手元供養したい | 手元供養店メモリーズインタイム

また、屋外の墓であれば、埋葬してから長い期間(例えば、数年から数十年)が過ぎるとカロート(遺骨を保管している地下室)の蓋の開閉が大変であることや、湿気により遺骨の状態が悪化している場合があるなど、遺族のみでの対応が難しい面があります。

3.分骨の仕方と留意点

分骨は、亡くなった方の家族を初めとした関係の親族の了解を得た上で行いましょう。もし、話がまとまらない場合は、法的に遺骨の管理者である喪主が判断をするのが妥当です。

分骨については、先にも記したように抵抗感を持つ方もいます。また、分骨の扱いについても様々な形があります(家に安置する分のみを分骨する場合、家族や近親者それぞれがペンダントに分骨を納める場合など)。これらの内容を踏まえて、関係する親族の了解を得ておくことが後々のトラブルを防ぐために大切です。

3.1 亡くなって火葬した後速やかに分骨する場合

先に記したとおり、分骨した骨を手元供養することとし遺族で管理するのであれば、墓などに埋葬する前に一部を分骨する場合、新たな法的手続きはありません。

ただし将来、手元供養していた骨を残りの骨を埋葬している墓や納骨堂に納めるなど、遺族と別の管理者の下で納骨する場合には、分骨証明書が必要となります。この場合、分骨証明書の発行は火葬時点となりますので、注意が必要です。将来その可能性があるのであれば、火葬証明書に併せて分骨証明書も発行してもらうことをお勧めします。

また、火葬場でお骨にした後にその場で分骨しても、遺骨を持ち帰った後、墓や納骨堂などへの埋葬前に分骨しても差し支えありません。家に従来よりある仏壇の前で分骨するなどの対応をされる方もいます。

火葬後その場で直ちに分骨する場合には、時間が限られているので、分骨の当面の扱いを決めて置き、分骨した遺骨をその場で残りの骨とは別に保管できるように段取りすることが必要です。
詳しくは、葬儀社等の担当の方に火葬前になるべく早く分骨の意向を伝え、その地域や斎場などのしきたりに合わせて行えるようにしておくといいです。

特に急ぐ事情がなければ、骨上げをした後に改めて分骨をするのが、慌ただしくなく落ち着いて取り進められます。

ただし、遺骨そのものは、もろくなっていたり、素手で触るとカビやすくなるなど、慎重な扱いが求められます。また、自身による分骨の作業に抵抗感がある場合(遺骨のパウダー化等)もあるでしょう。そのような場合には、遺骨の処理を専門の業者に依頼する方法もあります。

3.2 既に埋葬した方を、何らかの事情で分骨する場合

既に埋葬した方の遺骨を分骨する場合には、3.1と異なり手続きや手間が増えるので、次の点に注意をして予め段取りをすることが必要です。

  • 現在埋葬している墓等の管理者から、分骨証明書の発行をしてもらう必要があります。(将来的に手元供養し続け、お墓におさめない場合は不要)
  • 区画墓地にある外の墓の場合、カロートの扉の開閉と、遺骨の取り出しが必要となります。しかし、扉が重量物である石でできていたり、遺骨が湿気で痛んでいたりする場合があるなど、扱いに苦慮する可能性が高いことから、石材店等の専門業者と相談した上で取り進めるのが望ましいです。
  • 信奉している宗教がある場合は、埋葬先から骨を取り出し、分骨をする際に必要な儀式(仏教であれば読経など)をしてもらうよう段取りすること必要があります。

4.おわりに

このコラムでは、手元供養で一般的に必要となる分骨がタブーではないことと、分骨の具体的な方法(タイミング、手続きなど)や留意点の概要を解説しました。このコラムが手元供養を選ぶ際の参考になることを願っています。

手元供養という形をとることで、供養をする方自身が「きっと亡くなられた方も、生前親しかった人の近くに、常にいることができ喜んでくれている」と確信できるのであれば、望ましい供養のあり方と言えるでしょう。

(参考文献)
千葉徳爾『両墓制の時空間的展開,駿台史學』1995年
並川孝儀『ゴータマ・ブッダ滅後の教団とアーナンダ(阿難),文学部論集』1999年
グエン ティ ホアイ チャウ『現代日本の葬送における変化と連続,岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要』2011年