永代供養墓とは? メリット・デメリットから選ぶポイントまで
1.永代供養墓とは
日本では、少子高齢化の波が加速しています。
このため、子どもがいなかったり疎遠になっているなどの理由から、自分が亡くなった後、親族などに弔ってもらわなくてもすむように、寺や霊園が永久的または一定期間管理し供養を行う墓の形態が広がっています。
このような墓を「永代供養墓」と呼びます。
永代供養墓は遺骨の扱いから、より詳しく分類すると次の2通りに分かれます。
(1)亡くなって遺骨になった当初から、他の人の遺骨と一緒に埋葬する合祀墓(合同墓)に埋葬するもの。(広くは自然葬のうちの散骨や樹木葬で直接土に遺骨を埋めるものも含みます。)
(2)亡くなって遺骨になった当初は個別の墓または骨壺に保管し、一定期間経過した後、他の人と遺骨をまとめて弔う合祀墓(合同墓)に移すもの。(墓地の管理者によって異なるが概ね20~30年程度)
永代供養墓の意義としては、その墓地の管理者がある限りは、将来までその墓地で供養されることになり、死後の供養に不安を抱える方にとっては安心感が得られると言えます。
2.永代供養墓のメリット・デメリット
永代供養墓には、前述した意義がありますが、メリットとデメリットがあります。
メリットとして、次の点が挙げられます。
(1)埋葬後、墓の管理者がある限りは、将来的にその墓地で供養されます。
(2)一定期間個別に遺骨を骨壺等で保管したり、合祀墓(合同墓)とするため、必要とするスペースが従来の墓に比べて少なくて済みます。このため、同じ寺院や霊園で単独で区画墓地を建てるよりも価格が安く済むことが多いです。
(3)個別に確認する必要はありますが、多くの場合は、墓地管理者に一式料金を一括払いすれば、その後に管理料や寄付金を求められることはありません。
(4)現在は、特定の宗教(寺院等)で運営している永代供養墓でも宗教宗派を問わず受け入れているところが増えています。
(5)合祀墓(合同墓)の場合、様々な方の遺骨がお一緒に収められますので、賑やかな場が好きな方にとっては、亡くなっても寂しくないと考えられます。
一方、デメリットとして、次の点が挙げられます。
当初から合祀墓(合同墓)を選択した場合や当初個別に遺骨が保管されていても一定期間後、合祀墓(合同墓)に移された場合は、遺骨の回収は不可能なため、墓の移転などは不可能となります。
3.永代供養墓を選ぶポイント
3.1 永代供養を前提としない納骨堂や従来の墓との比較から
永代供養墓に埋葬する場合と、永代供養を前提としない納骨堂や従来の墓(区画墓地等)に埋葬する場合を比較すると、次のことが言えます。
・永代供養墓は、最初に一式料金を一括払いして納骨すれば、墓地の管理者である寺院等が残っている限り、一式に含まれる内容の範囲では、将来まで供養をしてもらえる。
・永代供養墓の場合、先ほどのデメリットでも挙げたように、合祀墓(合同墓)に埋葬された時点で、遺骨の回収は不可能になるので、この点を了承することが、永代供養墓を利用する上での前提となります。もし、遺骨の回収ができないことに違和感を感じるなら、遺骨の一部を分骨して別に供養を行うことも可能です。(手元供養など)
・永代供養を前提としない納骨堂や従来の墓の場合であれば、安置されている限りは毎年管理料等を支払わなければならない場合があります。したがって、その負担を代々誰かが背負い続けなければならないという懸念があります。
この場合、将来親族などがその負担をやめることにしたり、供養する方がいなくなった場合に、その時点での墓地管理者との協議や判断により、合祀墓等のように他の方とまとめて埋葬されることが多いでしょう。
3.2 永代供養墓の管理者の観点から(寺院営、民営、公営を比較して)
寺院営については、亡くなられた方がその寺院の宗派であれば、信教上の問題はないですし、前述したとおり、最近は寺院営でも自分の宗派以外の方の受け入れをしているところも増えています。民営については、もとより信教は関係がありません。
一方で、寺院営や民営の場合は特に一式料金の金額やその内容は千差万別なので、個別に十分確認する必要があります。
公営の永代供養墓は、東京都のように一定期間個別に安置した上で合同墓に遺骨を移す方法と当初から合同墓への埋葬する方法のいずれかを選択するできるところと、当初からの合同墓への埋葬しか選択できないところがあります。
公営の永代供養墓は、今のところは区画墓地と違って、納骨場所に余裕がある場所が多いです。ただし、永代供養墓を設置している市町村そのものがまだ少ないことや、区画墓地と同様に、一定期間その市町村に居住していたことが必要などの要件があります。
詳細は埋葬を希望する市町村役所(役場)に合同墓の有無や要件を確認する必要があります。
3.3 その他の留意したいポイント
(1)管理者を問わず共通した留意点
・永代に渡って供養してもらうための規定の一式料金は、墓地の管理者によって異なります。また、一式に含まれていないことを管理者に依頼する場合(不定期な墓参時の読経など)は、別途お布施を支払う必要がある場合もあるので、一式料金の内容とオプションとして今後必要となり得る経費も予め把握しておく必要があります。
・寺院営、民営、公営のいずれも、生前予約を受け付けているところがあります。生前に死後の埋葬先に強い希望がある場合には、生前予約をしておくことも選択肢の一つです。
ただ、生前予約の場合、永代供養墓の一式料金を予約とともに支払うよう求められる場合があります。
・死後に供養の気遣いをする可能性がある親族がある場合にはその方々への負担を考慮する必要もあるでしょう(交通の至便さ等)。
これらの点も含めて判断する必要があります。
(2)寺院営を検討する場合の留意点
・お寺の永続性や住職の人柄(実際に訪問して会ってみることが望ましいです。)
・遺骨の管理や慰霊塔の状況(きちんと掃除されている、痛みが少ない等、管理が十分なされているかどうか等)
(3)民営を検討する場合の留意点
寺院営でも言えることですが、経営が行き詰まり倒産してしまうケースがあります。霊園の管理者は中長期的に倒産する危険性が少ないと行政から判断されなければなれませんので、倒産リスクは比較的少ないと言えます。
しかし、実際にいま流行りの自動搬送式納骨堂の管理会社が倒産してしまった事例もあります。そのため、経営母体がしっかりとした組織を選択する必要があります。
4.まとめ
少子高齢化が進み、家族の形もライフスタイルも多様化が進む中、それにあわせてお墓の形も多様化してきています。
そんな中で永代供養墓には、これまで説明してきたように意義がある一方で、デメリットもあります。
意義としては、子どもがない、他の親族とは疎遠などの事情のある方にとっては、将来まで供養してもらえる安心感があると言えます。
また、価格面では、同じ墓地管理者の区画墓地に比べれば安価といえます。
ただ、そもそも区画墓地も価格そのものが墓地管理者ごとに異なることから、永代供養墓の価格の幅も同様に広いです。
また、合祀墓(合同墓)に埋葬されてしまうと遺骨の回収は不可能です。
生前予約も、従来の墓や納骨堂と同様に可能な場所はありますが、先に記したような点に留意することが必要です。
このように、永代供養墓の意義がある一方で、ある方にはメリットであっても他の方にとってはデメリットのこともありますし、その逆もあり得ます。これらを踏まえて、亡くなられた方、残された家族の方がそれぞれ納得できるお墓選びをすることが大切です。