本山供養とは?メリット・デメリットとその特徴

本山供養とは

本山供養ほんざんくようとは、「一宗一派の多くの末寺まつじを統轄する寺院で、死者の冥福を祈って読経などの催しを営むこと」と定義されます。

すでに寺院の檀家にいた方の中には、その信仰からいずれは遺骨をその寺院の本山で供養してもらえることが名誉なことと考える方もいるでしょう。

一方最近は、身寄りのない方や後に親族に迷惑をかけたくない方にとっては、実質的に永代供養をしてもらえるということで注目を集めつつあります。

もともとの本山供養の意味

歴史的には、古くから、各地を回っていた修行僧が、戦で命を落とした方、旅先で行き倒れて亡くなった方などの無縁仏を集めて合祀ごうししたり、経済的理由で自身の墓を持てない方のために、属する宗派の本山で合祀するようになったのが始まりと言われています。
主に西日本の寺院で信仰を広める際に、積極的に本山供養を勧めたことがきっかけとなりその利用者が拡がりました。

現在の本山供養と今日的なメリット、デメリット

”本山”供養という名前ではありますが、現在は受け入れの幅が広がり、生前の信仰に関わらず、多くの寺院で遺骨が受け入れられるようになりました。

さらに、今日的な視点では、他の供養方法に比べて、次のメリットがあります。

  1. 一般に価格は安価で後に寄付を求められることもなく、必要な経費については明朗会計であること。
  2. 寺院が続く限り定期的な読経などの供養は続けてもらえること。 したがって、残された親族などの供養が必ずしも必要ではないこと。
  3. 本山供養に限りませんが、分骨して供養をする場合、多様な供養の選択が可能となること(詳細は後述)。

一方で、次のようなデメリットもあります。

  1. 歴史的な経過もあり、合祀が基本である。このため一度納骨したら、再び回収することは不可能
  2. 受け入れをしている寺院は広がりつつあるものの、現在も西日本を中心に偏在しており、必ずしも遺族が住んでいる場所の近くにあるとは限らない。
  3. 全骨、分骨のいずれも受け入れるところが多いが、寺院によっては、分骨のみの受け入れが基本で、全骨だと大きく価格が上がるなど、条件が変わることがあるところもあるので、注意が必要。

本山供養と分骨

分骨そのものは、歴史的な経過や現在の習慣、宗教的な観点(特に仏教)からは、問題のないものです。したがって分骨して、近年多様化している供養方法を複数併せて選ぶことも可能です。

本山供養した遺骨以外の骨の供養の方法としては、従来の墓地や納骨堂の活用をするという方法がありますし、一部の遺骨を身近に残す手元供養や散骨、樹木葬などの近年広がっている新たな葬送方法をとる選択肢もあります。

おわりに

本山供養は現在、生前の信仰に関わらず幅広く遺骨を受け入れています。また、合祀とはなりますが、従来の墓や納骨堂に比べて、一般的に安価で、寺院がある限り供養を続けてもらえるという利点があります。

このことは、子どもや近い親族がないなど、亡くなった後の遺骨の扱いに不安のある方にとっては、有り難い方法と言えるでしょう。自分が亡くなった後の親族に供養を続けてもらう必要がなくなるので、親族が遠くにいるなどの事情がある方にとっては、その親族の方々の負担を減らすことができると言えます。

一方、本山供養はこれまでの経過や骨上げの習慣などから分骨での供養が一般的で、残る骨の供養の方法は別に考える必要があることが多いです。

しかし残された遺族らが、分骨そのものが古来より広く行われており、問題ないことを受け止めて、現在の多様化した供養の選択肢も含めて、遺骨全体としての供養を考えることで、今まで以上に関係者の方々が納得できるような供養方法を見出していくことができるのではないでしょうか。

(参考文献)
千葉徳爾:両墓制の時空間的展開,明治大学文学部史学地理学科,駿台史學,93(1995)183-195.